甘酸っぱくない思い出 パート2

08-26,2013

ええー、この前の話の続き。
読んでない方は、出来ればその記事から読んで欲しい。
(甘酸っぱくない思い出 パート1)
あの忌まわしい事件で、九死に一生を得たわしは、
「フルチンで、他人の家のお風呂に籠城する」と云う、
17歳の少年に有るまじき行為をした事など、綺麗さっぱり忘れ、
その後も呑気に、のっほほぉ~んと暮らしていた。

そんなある日の事だ。
いつもの様に友人Mの家でゴロゴロとギターを弾いたり、
下らない事でヘラヘラと笑っていた時、その電話はかかって来た。
もう日が暮れた後だったと思う。
携帯電話など無かった時代だ。
しかし、わしが友人Mの部屋に居るのは間違い無いと思ったのだろう、
それは、わしの彼女からの電話だったのだ。

「お父さんが今すぐ家に来いと言っている…」
彼女は、いきなりそう用件を切り出してきた。
大好きな彼女からの電話でニヤついてたわしの顔が、その瞬間凍りついた。
へ?
今なんつった?
お父さんが?
来いとな?
今すぐ、家に来いとな?
何で?
何で、こんな時間にわしを家に呼ぶ?
まさか、この間の籠城について釈明しろとでも?
でも、この前の件は、あれで許してくれたんじゃなかったのか?
わし素直に誤ったし、あの時怒らんかったじゃん、それがなぜ今?
あっ、それとも、もしかしたら、
「先日、お主がやった籠城、見事だったぞ!見上げた奴だ褒めてつかわそう!」
とでも言って、何か褒美でもくれるとか?
もしくは、寒い風呂場に長時間籠城してた、わしの身体を気遣って、
慰安会でも開いてくれるとか?
ひょっとして、「わしにも籠城のコツを伝授してくれ」とか?
いやいや、いやいや!
んなアホな!
そんな訳無いだろ!
どこの世界に、親の居ない隙に家に上がり込んで1時間も、
それも全裸で、風呂に籠城する様な男を褒め称える奴がいる?
ましてや、自分も何処かで籠城する気満々とか、
世界中探したってそんな親いる訳無いよな。

こりゃ、怒ってんだよ!
この前は、あんなに紳士的な態度で接してくれたけど、やっぱり怒ってたんだ!
そして、日が経つに連れ怒りの炎が燃え盛り、今日それを大爆発させる気なんだ!
こりゃ、もし行ったらマジで今度こそ、どつき回されるかもしんないぞ!
その挙句、寒い風呂場どころか極寒の中、全裸で家の軒下に吊るされるかもしれんぞ!
あぁ、嫌だぁ!
行きたくない!
ここで(友人Mの部屋)で、このまま呑気に遊んでいたい!
楽しくギター弾いて笑っていたい!
やだやだ、やだやだぁぁああああ!

そう思ったわしは、どうにかこの場を逃れ様と、さりげなくこう言ってみた。
「うぅ~ん…今すぐっつってもねぇ…直ぐには電車ないよぉ…
それに、その後、バスだって乗んなきゃいけんしぃ…
かと云って、自転車は無いしぃ…
かなり遅くなるから今日は止めた方がいいんじゃないかねぇ?」と。
すると、「タクシーに乗って来いと言ってる」とあっさり彼女に言われた。
どうしても行きたくないので、
「うぅ~ん…今日はタクシーに乗る金が無いからねぇ、
また今度でどうでしょうか?と言ってみてくれ」
と、祈る様な気持ちで彼女に頼んでみた。
しかし、きっぱりと却下された。
「金は、払ってやるから、とにかく今すぐ来いと言っている」と、彼女が云う。
「うぅぅん…でもタクシーすぐ捕まるかねぇ…」と、尚も何とかごまかそうとするが、
「つべこべ言わず、すぐに来いと言ってる」と、泣きそうな声で彼女に言われた。





完全に詰んだ。
この調子で断り続ければこの親父、
今度は、逆にわしの家までやって来ると言い出しそうだ。
それはまずい!
わしの親に、
「お宅の息子さん、先日我が家の風呂場に、全裸で1時間も籠ってましてねぇ、
警察呼ぶ一歩手前でしたよ」とか、言われるのだけは勘弁して欲しい!
もう、行くしかない…

よっしゃ!
こうなりゃ仕方がない!
わしも男じゃ!
ここは、一丁、腹決めて行ったろうかい!
男一匹ガキ大将的にそう決意したわしは、心配そうに見守る友人Mを見つめて、
毅然とした態度&力強い顔を装いながら、弱々しくこう言った。
「頼むけん、お前も一緒に来てくれんか?」と……

嫌がる、友人Mを強引に説き伏せ、タクシーで彼女の家に向う。
「原因不明の大渋滞で、これ以上先に進めません!」
って事になんないかなと思ったが無駄だった。
全てのタイヤが破裂しないかと願ったが、それもダメだった。
こんな時に限って、渋滞もなくタクシーはスイスイ進み20分程でちゃんと着いた。
玄関を開ける手が震える。
「あぁ、夢なら醒めてくれ!」そう思ったが、これは現実だ。
「ヘルメット被った、色黒のおっさんが
"ドッキリ"と書いたプラカード持ってひょっこりと出て来ないか?」
そう思ったが、勿論ドッキリでもない。
ちゃんとドアは開いて、すぐに彼女が出迎えてくれた。
上がり框の横に、風呂が有る。
つい数日前の事なのに、何故か懐かしい。
ふと、「このままここで、もう一度籠城しちゃおうか…」
と云う、狂った様な誘惑に襲われる。
しかし、そんな訳にはいかない。
数メートル先に、お父さんが座っているのだ。
リビングの座卓の前に、デーンと座っているのだ。
「お邪魔します」
そう丁寧に挨拶しながら、お父さんに近付いて行く。
そして、少しでも場を和ませようと、
精一杯の愛想笑いを浮かべながら、そっとお父さんの顔色を伺う。




真っ赤だった。
真っ赤な顔で、完全に酔ってらっしゃった。
ベロンベロンに、酔ってらっしゃった……

そこからが、まぁ地獄だった。
説教と云うか愚痴と云うか、この前の物静かな、紳士的な態度は一切無く、
仁義なき戦いに出てくる極道の様な口調でいきなり、
「わりゃ(広島弁、お前の意)したんか?」と言われた。
慌てて「へ?何をでがす?」と返すわし。
「おぉ?わりゃ、わしの娘とセッ○スしたんか?と聞いとんじゃぁ!」と、お父さん。
あまりの豪快な、ど直球の質問にたじろぎながら、
「いえ、そんな事しておりません」とオロオロ答えるしかなかった。
しかし、全く聞く耳を持たない。
それどころか、更に興奮しながら、
「わしゃ娘の事が可愛いてならんのじゃ、それをこのガキがぁ、
わりゃ、わしの娘とセッ○スしたんじゃろうがぁ!
おう?わりゃ、やったんじゃろうがぁ!」
と畳み掛ける様に、聞いてくる!
「いやあのぉ、すみません。あのぉ、してません。」とオロオロと言い続ける。
言い続けても、泥酔してる親父の耳には届かない。
必死で止める彼女の言う事も聞かず、尚も、わしを責める。
「やったんか!やったんじゃろがぁ!セッ○スしたんじゃろうがぁ!」
娘の前で、とんでもない質問を、次々とぶつけて来る!
「いや、ホントですぅ。してません。すみません。もうしません!」
軽いパニック状態になりながらも、そう言い続けるしかない。
暫くすると、「いい加減にしろ!もう酒を飲むな」と彼女が怒り始めた。
怒ってても可愛かった。
だが、親父は完全無視で、尚もガブガブ飲み続ける。
友人Mは、少し離れたところに座り、怯えるわしを見て、笑いを堪えている。
すると完全泥酔親父、今度は、何処からか、もぐさを取り出して来た。
そう、あの身体のツボなどにする、お灸用のもぐさだ。
そして、自らの手で丸めた巨大なもぐさ(直径10センチ)の塊に火を付けながら、
「どのチ○コがやったんならぁ!ここに出してみぃやぁ!灸したるけん、こらぁ!」
と、物凄い勢いで迫って来た!
「ひぇぇぇええ~!すみません!やってません!してません~!」
と言い続けるわし。
「ええけん、出せ!チ○コ出せ!」と親父。
「ま、ま、待って下さぁあいいいいい!許して下さぁあいいい!
やってません!してません! 信じて下さいぁぁあいいい!」とわし。
もう殆ど地獄の責め苦だ。
そして、そんな中でもわしは、ただただ謝るしかなかった。
怒りの嵐が通り過ぎるのをジッと待ちながら、誤り続けるしかなかった。

それから2時間程経った頃だろうか、
若干落ち着いたお父さんが、テレビの上にある常備薬「強力わかもと(胃腸薬)」を取れと言う。
とても巨大なビンだった記憶がある。
「こりゃ、健康にええんじゃ!お前らも飲め!どんどん飲め!もっと飲め!」
そう言われながら、何度も飲まされた。
5~6錠ずつ何度も何度も。
最終的には合計100錠は飲まされた筈だ。
(当然、横にいた友人Mも同じだけ飲まされた)
そして、微かな記憶によると、確かこの辺でやっと解放された様な気がする。
地獄の責め苦からの解放だ。

この後、どうやって家に帰ったか覚えていない。
多分、もう一度お金を貰い、タクシーで帰ったのだろう。
そして、また友人Mの部屋に行き、さっきの件を思い出しヘラヘラと笑ってたんだろう。
当時のわしがする事は、精々そんなとこだ。

今思うと、よくこれで許してくれたなと思う。
大事な娘さんなのだから、怒って当然だ。
本当は、わしを殴りたかったのかもしれない。
でも、許してくれた。
それどころか、その後色々な事で凄く良くして貰った。
ホント、いい人だった。

彼女とは、それから数年して別れた。
ってか、フラれた。
一度だけ、子供の手を引く姿を、偶然見たがそれっきりだ。
お父さんともそれ以来会ってない。
母親になった彼女は、こんな事もう覚えていないかもしれない。
それが当たり前だろう。
でも、やはりわしにとっては一生忘れられない思い出なのだ。

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ジャズを一枚!
Mike Moreno参加作。



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COMMENT

あははははははははははっ
まるでコントのようなはなしですねぇ!
しかも最後は、ちょっぴりペーソスを漂わせて締めるあたり、ニクいです!

もっと、いろんなはなしさ、聞がせてけろ〜!
2013/08/26(月) 21:54:15 |URL|J works #- [EDIT]
ええお話でした。事実に勝るものはないですね~。
2013/08/27(火) 06:53:21 |URL|ならば #- [EDIT]
J worksさん、どーもー!
そう、今考えるとコントです。
しかし、当時は怖かった!
逃げたかった!
いっそのこと、消えてしまいたかったです!
2013/08/27(火) 08:30:37 |URL|ガーシャ #- [EDIT]
ならばさん、ありがとうございます!
今では、いい思い出です。
目を閉じると昨日の事の様に浮かんできます。
2013/08/27(火) 08:34:19 |URL|ガーシャ #- [EDIT]
なんかうる覚えだが、ハッキリ覚えてるのは「強力わかもと」の存在。

あのオッサン毎日じゃらじゃらと茶碗一杯位強力わかもと食べてんじゃないんかーっ!と、家に戻って(安全圏へ避難して)からネタにしてたような記憶がある。なんせ30年以上も前の話じゃからのぉ〜

それにしてもあれで許してくれたお父さん、わしらも見習わないといかんな。あの懐の深さ、今考えると凄いよね。

普通娘にあんな事されたら、死ぬ迄拷問だぞ。アンネ・フランクの人生がハワイでバケーションに感じる位の拷問だぞ。エンペラー吉田に死ぬ迄甘噛みされても文句言えんぞほんまに。

自分も、今考えると沢山の人を傷つけた。時間を巻き返す事は出来ないから、これからは自分が傷つけられた時、これらを思い出して対処したいね〜
2013/08/27(火) 18:19:39 |URL|ラバオ #TAgeFoVU [EDIT]
ラバオよぉ〜。
お前にも、迷惑かけたのぉ。
今、改めて礼を言うぞ。
"ありがとう~ラバオおぉ!"
確かにお父さんの事は見習わんといけん!
こりゃ一丁、あれ以来の強力わかもと、飲んでみるか!
2013/08/27(火) 20:26:36 |URL|ガーシャ #- [EDIT]

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