BBA48

02-21,2013

ある日曜日の昼下がりの、スーパー。
日曜日と云う事もあり、
店は大混雑していた。(この日曜日のスーパーについては、他にも話したい事あるのだが、それはまたの機会に。)
ほぼ買い物を終えたわしは、店の一番奥、
お惣菜コーナーに来たところだった。

「何か今晩のおかずでも、買うか」と物色中にそれは起きた。

奥の調理室から出てきた店員の青年が、出来たてのかき揚げ4個を、
丁度わしの目の前、空になったトレイの上に置いたのだ。
それは偶然だった。
たまたまだったのだ。
でも、まさにそれが、このお話の始まりだったのだ。


「丁度いい、これ買うか」と、わしは目の前のトングをつかみ
今まさに掴まんとしたところだった。
二人のおばさんが、人混みを掻き分けながら現れたのだ。

一人は
おばさんA(後のババア)
推定年齢48歳、
 肥満体型、
ご近所を締めてる感あり。
常に前へ出たがるタイプだろう。
いかにも油物が好きそうなテカった顔をしてる。

もう一人は、
おばさんB、
推定年齢43歳 、
小太り、
肝っ玉母さん度高し。
やり繰り上手な、節約家タイプだろう。
亭主の小遣いを出来るだけ削ってるはずだ。

話を戻そう。
トングを持つわしに向かって

「それ~私んなのよぉ~ 私がお願いしてたのよぉ~」
ゴリラ似の顔に似合わぬ、甘えた様な鼻声の大きな声 で
現れたのが、おばさんAだ。
そのかき揚げは、私が予約してた物だとの主張だ。

何だこのババア(この時点からババア)と、
その鼻声に若干イラっとしながらも、うろたえた、わしは、
「え?そうなの?これアンタのなの?わし、人の物とってたの?」と
思っってしまったのだ。(その間三秒)

しかし、よくよく考えるとそんな訳ないのだ。
ここには、そんな制度など無い!
現に今、お惣菜コーナーの青年はお前の事など無視してたではないか。(その間二秒)

わしはその瞬間に悟った。
ははぁん。そうか、そう云う事か。
これはブラフだなと。
騙そうったってそうはいくか!
お前は、自分の所有権を声高に主張する事で、
主導権を握るつもりだろうが、
わしは、お前の作戦には引っかからんぞ、と。

ここで確認しておきたいのが、おばさんBの動きだ。
ほぼ二人同時にこのコーナーにやって来たが、
わしの目には若干おばさんBの方が早かった気がしたのだ。
しかし、この発言に惑わされた。
ババアの作戦に乗せられた。
おばさんBはまんまとババアに主導権を握られ、
一歩退いてしまったのだ。

しかし、よく聞け、ババアよ、
わしはお前のブラフには引っかからん!
ゴリラ似のお前になんか負けん!
気を取り直したわしは、改めてかき揚げのビニール袋への収納作業を再開したのだ。

だが、こ奴、さすがの業師だ。
その間も、ずっと、わしの横で囁く様に「私、お願いしてたのよぉ~」と鼻にかけた声で、
言い続け、あわよくば、わしを出し抜こうとする気を隠しもしないのだ。

だがわしも負けてはいない。
何言ってんだ?ババア。
何度も云うが、(心の中で、だけど)
ここには予約制などない!
トングを持ってんのはわしだ。
今この状況の中で、優先権を持ってんのは、このわしなんだ!
と無視を決め込んだ。
そして、わしは、二つ目のかき揚げにトングを伸ばしたのだった。

と、その瞬間だった。今でも覚えている。
わしをじっと見ているババアが、ハッ!と息を呑んだのを感じたのだ。
あきらかに周りの空気が、震えた。
横目でババアを伺うと、大きく目を見開いている。鼻の穴も。
"ババアが、焦っている。4個のかき揚げの行く末を案じている"
そう、かき揚げ計四個に対し、人間は計三、
当然 割り切れないのだから。

そんなババアの物凄い圧力を感じながらも、
わしは負けじと二個目の収納に取り掛かった。

"当たり前だババア。わしは、単身赴任のオヤジじゃない。家族だっているんだ二つ買ってなにが悪い"そう思った。
いや、そう思う事でしか
ババアの鋭い視線に耐える事が出来ないのだ。

そして、まさにその時だった。
ババアは、多分わしが三つ目に行くんじゃないかと
懸念したのだろう。
焦りの頂点に達したババアは、忍者の様に素早くわしの横に回り込んだ。
そして雌ゴリラの形相で、揚げたての熱いかき揚げを手掴みで取る
と云う暴挙にでたのだ。なんと云う荒技だ。

ババアは鼻にかけた甘え声で、「熱いぃ~、熱いぃ~」と言いながらも
手にしっかりとかき揚げを握りしめ、ビニール袋に入れようと
あたふたしてる。

当たり前だろ!バッカじゃないのか?お前は。
揚げたての、かき揚げだ。
さっきまで160度を超えた油の中にあった物だぞ!

しかし、ババアは、諦めない。なんとかかき揚げをビニール袋に入れると
なんと最後の一個にも手を出したのだ。
そして、またも「熱いぃ~熱いぃ~」と甘え声のオンパレードだ。

わしの持ってるかき揚げまで狙って来そうな勢いに
流石のわしもたじろいだ。

すると、それまでじっと見ていた、おばさんB。
さすがに、黙っていられなくなったのだろう。
「えぇ~えぇ~」「無くなるぅ~」とか言って不満を表しはじめた。
どうにか一個でも手に入れたいと云う思いだろう。
でも、ババアの余りの、ど迫力に後が続かない。

そんなおばさんBの弱腰につけ込んだババア、「私んだから~」「お願いしてたのぉ~」
と例によって鼻にかけた腹立つ声 で、
立て続けにブラフをかまし
おばさんBの声をシャットアウトした。
ババアの完全勝利だ。

しかし、そんな泥沼の戦いを横目に、わしは、案外冷静だった。
そして、こう思った。
"このババア、まだ言ってやがる。甘えた声出してるが、
顔がゴリラなんだよお前は"

そして、あえてゆっくりと作業を続けたのだった。

そう、焦る必要は無いのだ。

トングと云う御旗を持つわしは、まさに官軍なのだから!
勝者なのだからァ


そして戦いは終わった。

かき揚げ二個を獲得して、そそくさと立ち去るババア。
獲得0で、淋しそうに俯くおばさんB。
何もかも終わったと思った。その時は。

しかし、その平和も束の間だったのだ。

作業を終え、ふと周りを見ると、わしのカートが無い。
何故だ?焦りながらもじっくり確認すると、持ち主のいないカートが一台わしの後ろにある。

その残されたカートには、わしがその日買った鍋材料と似通ったものが入っている。
しかし決定的に違う!冷凍鴨肉が入ってないのだ!
わしのじゃない!

その瞬間わしは、思った、間違いなくババアだ。
奴は極度の興奮状態にいた。
冷静な判断力がなかった奴が間違えて持って行ったんだ!

しかし、既にババアは、いない。
そこでわしは、考えた。
これは、下手に動かない方が良い。間違えに気付いたババアは、絶対ここに戻ってくる筈だ。
ここでババアを待ち伏せだ。

暫くすると、案の定だ。
レジ方面から両手にかき揚げの袋のみをにぎりしめた
ババアがズンズンやって来た。「フンガー、フンガー」と凄い鼻息だ。
鬼の形相だ。興奮がマックスに達してるのだろう。

余りの形相に黙って見てると、やはり残されたカートを持って行く。

チラチラとわしを見ながら
さも、"ここに置いてただけだけど、何か?"って顔で。

腹立つババアだ!何だその顔は!わしは、知っとんじゃい!
わしのカート持ってただろ!何処へやった!

絶対あっちにあるはずだと、ババアの来た方角に行くと
やっぱり、あった!
一番混み合ってるレジ前の通路のど真ん中にわしのカートを放置してる!

このババアァー
間違えに気付いたのは良いが
わしのカートは放り投げ自分のカートだけとりに来てんだ!

とんでもないババアだ!かき揚げ一つでなんて奴だ!
わしの怒りはマックスだ! わしは、拳を握りしめた!許せん
そして…

でもね、
興奮マックスで、
鼻息の竜巻起こしながら
スーパーのかき揚げ手掴みする様な
ゴリラ似のババアに
文句一つ言えないわしは、黙ってレジに並び
お金払って帰ったのでした。

これが、そのかき揚げ。

P2191033.jpg

終わり。



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興奮したババアに聴かせたい、ビルエバンスのリリカルなピアノ。






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